パーキンソン病患者の手

論文

パーキンソン病にも関わる酸化ストレス

ムクナ豆の抗酸化作用

パーキンソン病特有の病態として、脳内の黒質という部位でドーパミンの減少が確認できます。また患者の組織内にてレビー小体と呼ばれる特異なタンパク質が見られる等、特徴的な点は複数挙げられ、これらが病気の要因と考えられますが、中でも紀州ほそ川では酸化ストレスとの関係性に注目しています。
脳内で代謝されたドーパミンは過酸化水素を産み出しますが、通常ですと有害な過酸化水素は体内ですばやく除去され細胞は正常に保たれます。ところがパーキンソン病患者の脳内では過酸化水素などの有害酸素の濃度が上がり、細胞がダメージを受けています。また逆に酸化ストレスがパーキンソン病の一因であるという説もあり、いずれにせよ酸化ストレスの影響は大きく、パーキンソン病とは密接な関係にあります。
紀州ほそ川では1995年より和歌山県立医科大学との研究を通して伝統食材の酸化ストレス抑制について研究を続けており、ムクナ豆の抗酸化作用にも大きな可能性を感じています。
参考にムクナ豆の抗酸化作用に関する論文をご紹介します。

抗パーキンソン病薬 -ムクナ(Mucuna pruriens)が示す抗酸化作用と金属キレート効果

要約
パーキンソン病は神経変性疾患であり、現状では神経回復を目的とした治療法は確立されていない。
パーキンソン病の病態生理学においては酸化ストレスが重要な役割を果たす。古代インド医学であるアーユルヴェーダでは、パーキンソン病を治療するのに伝統的にムクナ豆(Mucuna pruriens)を用いている。
我々の先行研究において、ムクナ豆がパーキンソン病の動物モデルにおいて抗パーキンソン作用と神経保護作用を有することが示されている。
ムクナ豆の有する抗酸化作用は、ムクナ豆がDPPH ラジカル(DPPH:2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)やABTSラジカル(ABTS:2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)二アンモニウム塩)、活性酸素種を補足する能力により実証された。
ムクナ豆は脂質とデオキシリボース糖の酸化を大幅に抑制し、二価の鉄イオンをキレートする能力を示した。更に、プラスミドDNAに対する遺伝毒性や変異原性は示さなかった。
これらの結果から、ムクナ豆の神経保護・神経回復作用は、症状改善作用とは無関係に、抗酸化作用が関与している可能性が示唆された。加えて、パーキンソン病の患者の治療において、この薬は治療上安全であると思われる。

引用)Muralikrishnan Dhanasekaran 1, Binu Tharakan, Bala V Manyam,“Antiparkinson drug–Mucuna pruriens shows antioxidant and metal chelating activity”Phytother Res. 2008 Jan;22(1):6-11. doi: 10.1002/ptr.2109.
PMID: 18064727 DOI: 10.1002/ptr.2109