ジスキネジアの症状が出ている手

論文

ジスキネジアを増加させず効果を出すムクナ豆

パーキンソン病でジスキネジアがある場合

パーキンソン病の場合、罹患初期にはL-ドーパ製剤を服用することで比較的すぐに症状改善が期待できますが、病状の進行に伴って、薬の服用と共に運動合併症が現れる場合があります。運動合併症の一つ、「ジスキネジア」は自分の意志とは無関係に手足や舌が勝手に動くもので、日常動作の妨げとなりがちです。これは薬が効きすぎ、L-ドーパの血中濃度が高くなりすぎて起こる副作用の場合が多くL-ドーパ製剤の弊害と言えます。
一般的にL-ドーパ製剤を服用すると2時間ほどでL-ドーパの血中濃度が上がり、1時間ほどで急激に下がります。一方ムクナ豆では血中濃度が30分ほどで一気に上がり、その後1時間かけてゆっくり下がります。つまり効果が早く出て、長く続き、しかもジスキネジアを伴わないという研究結果があることから薬剤での標準治療の利点を上回っている可能性を示唆しています。

パーキンソン病におけるムクナ豆(Mucuna pruriens):二重盲検法による臨床的・薬理学的研究

要約
背景:インドの伝統医学であるアーユルヴェーダにおいて、マメ科植物であるムクナ豆の種子粉末はパーキンソン症候群を含む病気に対して長い間用いられてきた。我々は、2種類の異なる用量のムクナ豆製剤投与後の臨床効果およびレボドパ(L-dopa)薬物動態を評価し、標準的なレボドパ/カルビドパ(LD/CD)と比較した。

方法:レボドパの反応時間が短く、定期的にジスキネジアを起こすパーキンソン病患者8名が、ランダム化対照二重盲検クロスオーバー試験に参加した。
患者には一週間間隔で200/50mgのLD/CD単回投与と15gと30gのムクナ豆製剤をランダムな順序で投与した。
レボドパの薬物動態を測定し、統一パーキンソン病評価スケール(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)とタッピング速度について、ベースライン時および薬物摂取後4時間の間に繰り返し測定した。
ジスキネジアは修正版の異常不随意運動評価尺度(AIMS)とGoetzスケールで評価した。

結果:標準的なLD/CDと比較して、30gのムクナ豆製剤はかなり早い効果発現を示し(34.6 v 68.5 min; p = 0.021)、それはレボドパの血漿中濃度のピークに達するまでの待ち時間が短いことに表れている。
平均オンタイムはLD/CDに比べ30gのムクナ豆で21.9%(37分)長くなった(p = 0.021)。
レボドパの血漿中濃度のピークは110%高く、血漿中濃度と時間を軸に取ったグラフの曲線下の面積(曲線下面積)は165.3%大きかった(p = 0.012)。
ジスキネジアや忍容性においては有意な差は生じなかった。

結論:ムクナ豆の種子粉末の製剤の使用により、付随的なジスキネジアの増加を伴わずに早い効果発現とより長いオンタイムが見られたことから、このレボドパの天然供給源が従来のレボドパ製剤よりもパーキンソン病の長期的な管理において利点を有している可能性が示された。
ランダム化対照試験による長期的な有効性と忍容性の評価が必要である。

引用)R Katzenschlager 1, A Evans, A Manson, P N Patsalos, N Ratnaraj, H Watt, L Timmermann, R Van der Giessen, A J Lees,“Mucuna pruriens in Parkinson’s disease: a double blind clinical and pharmacological study”,J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2004 Dec;75(12):1672-7. doi: 10.1136/jnnp.2003.028761.
PMID: 15548480 PMCID: PMC1738871 DOI: 10.1136/jnnp.2003.028761