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パーキンソン病とムクナ豆
2022.10.12
ムクナ豆とは、インド原産のマメ科蔓性植物です。別名「八升豆」と呼ばれるこの豆は、ドーパミンの前駆物質L-ドーパを多く含み、5000年の歴史を持つインドの医学書アーユルヴェーダにもその名が記載されるなど、古くよりその薬効が着目されてきました。現代においてもその効能に注目が集まっています。
ムクナ豆の研究は世界で広く進められており、以下のような効能を認める論文や研究が発表されています。一方ムクナ豆は、L-ドーパ剤(エルドパ、レポドパ)の代用としても利用されるほど、L-ドーパを含む食品ですので、過剰な摂取によって以下のような副作用が出現する危険性があります。適量を守る事が大切です。
●抗パーキンソン症状 ※1
●うつの改善 ※2
●血糖低下作用 ※3
●降圧効果 ※4
●コレステロール低下効果 ※4
●抗酸化作用 ※5
●精子の質向上 ※5
●ED回復 ※6
●瀬川病の緩和 ※7
その他、L-ドーパの働きで、むずむず脚症候群ややる気アップ、ストレスの緩和、不眠の改善、睡眠の質改善、疲労の軽減などに効果を感じた利用者の声が多く聞かれます。
●興奮 ※8
●幻視・幻覚 ※8
●妄想などの中枢神経症状 ※8
●生や半生の豆を食べることによる消化器症状
参考文献(外部リンク)
※1 抗パーキンソン症状に関する論文 参考) R Katzenschlager, A Evans, A Manson, P N Patsalos, N Ratnaraj, H Watt, L Timmermann , R Van der Giessen, A J Lees, “Mucuna pruriensin Parkinson's disease: a double blind clinical and pharmacological study” , J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2004 Dec ※2 うつの改善に関する論文 参考) Digvijay G . Rana and Varsha J. Galani,“Dopamine mediated antidepressant effect of Mucuna pruriens seeds in various experimentalmodels of depression” Ayu. 2014 Jan-Mar ※3 血糖低下作用に関する論文 参考) M S Akhtar , A Q Qureshi, J Iqbal,“Antidiabetic evaluation of Mucuna pruriens, Linn seeds” J Pak Med Assoc. 1990 JulDonato Donati , Lucia Raffaella Lampariello, Roberto Pagani, Roberto Guerranti, Giuliano Cinci, Enrico Marinello, “Antidiabetic oligocyclitols in seedsof Mucuna pruriens” Phytother Res. 2005 Dec;19 ※4 降圧効果に関する論文 参考) Luis Chel-Guerrero, Saulo Galicia-Martínez, Juan José Acevedo-Fernández, Jesus Santaolalla-Tapia, David Betancur-Ancona, “Evaluationof Hypotensive and Antihypertensive Effects of Velvet Bean (Mucuna pruriens L.) Hydrolysates” J Med Food. 2017 Jan;20(1):37-45 Francisco Herrera Chalé a, Jorge Carlos Ruiz Ruiz ORCID logob, David Betancur Ancona a, Juan José Acevedo Fernández c and Maira Rubi SeguraCampos, “The hypolipidemic effect and antithrombotic activity of Mucuna pruriens protein hydrolysates” Food Funct., 2016, 7, 434-444 ※5 抗酸化作用・精子の質向上に関する論文 参考) Sekar Suresh,Elumalai Prithiviraj, Seppan Prakash, “Effect of Mucuna pruriens on oxidative stress mediated damage in aged ratsperm ” Int J Androl. 2010 Feb ※6 ED回復に関する論文 参考) Stephen O Majekodunmi 1, Ademola A Oyagbemi, Solomon Umukoro, Oluwatoyin A Odeku, “Evaluation of the anti-diabetic properties ofMucuna pruriens seed extract.” Asian Pac J Trop Med. 2011 Aug ※7 瀬川病の緩和に関する論文 参考) 徐悦, 石黒精, 秋山倫之, 新宅治夫, 久保田雅也“ムクナ豆服用で 7 歳からの日内変動を伴う歩行障害が消失した 瀬川病の11 歳女児” 小児科臨床 72(1): 89-93, 2019. ※8 ムクナ豆の副作用・興奮の緩和・幻視・幻覚・妄想などの中枢神経症状に関する論文 参考) 西川典子, 久保円, Win Thiri Kyaw, 細川清, 高垣昌史, 菅能麻梨子, 岩城寛尚, 野元正弘“高齢者におけるムクナ豆シートの安全性- 薬物動態試験と非盲検試験 ” 薬理と治療 Volume 45, Issue 11, 1851 - 1857 (2017)● 症状が軽減した方…適正量です。まずはこの量を一日 3 回摂りましょう。
● 気分が悪くなった方…量が多すぎます。少し時間を空け、半分の量で試してみましょう。
● 効果を感じない方…量が少なすぎるかもしれません。少し時間を空け、今度は 倍の量を摂ってみて不足が理由で効かないのかどうか様子を見ます。副作用なく効果を得るためには、適量の見極めが大切です。自分の適量を続けてみましょう。
専門家の目
ムクナ豆製品には、粉末やお茶など様々な加工品がありますが、市場に出回る製品の中にはL-ドーパが壊れて失われていたり、パッケージや製品ページに表示されているL-ドーパ量との相違が指摘されるものが存在することが、大阪河﨑リハビリテーション大学にてムクナ豆研究を手がける河野良平先生の研究において判明しました。
市販のムクナ豆製品のL-ドーパを定量したところ、粉末の製品ではL-ドーパが0.95~3.15%含まれたのに対し、ムクナ豆茶ではほとんどの製品で0.1%を下回ることが判明しました。これは加工時の熱によりL-ドーパが変性したことが原因と考えられます。このことからL-ドーパ摂取を目的とする場合の製品選びには注意が必要と言えます。
参考) 第29回日本未病学会学術総会 【演題名】ムクナ豆(Mucuna pruriens)製品中に含まれるL-DOPA量の比較
お話を伺ったのは
大阪河﨑リハビリテーション大学
河野 良平 講師
1982年 広島県出身。近畿大学生物理工学部卒業。工学博士。専門は疾病予防食品学、機能性食品学、食生活学、生物学。マイケル・J・フォックス パーキンソン病リサーチ財団から、パーキンソン病に興味を持ち、疾病を科学の視点で研究を続けている。
症状緩和の他にも、気づいたら「あれ?調子が良いな」という場合も。ムクナ豆を実際に摂られた方の感想とは?口コミをまとめてみました。
●手足の動きがスムーズになった
●うつうつとした気分が明るくなった
●疲れにくい
●やる気が出るようになり、元気が出る
●眠れない時に良い
●頭がすっきりする
●更年期の症状に良い
など
ムクナ豆は江戸時代には日本で食用として栽培されていました。当時の薬学をまとめた書物「本朝食鑑」に藜豆(れいず)として紹介されていますが、この書は庶民になじみ深いに食品についてまとめられたものであることから、ムクナ豆が庶民に身近な食材であったことが分かります。
かつて庶民の味だったにも関わらず、江戸時代以降栽培が廃れてしまった国産ムクナ豆。その復活は至難の業でした。和歌山県の老舗梅干屋、株式会社紀州ほそ川では2008年先代の時代よりムクナ豆の栽培をスタート。国内でも主に外来種で育てられていたムクナ豆ですが、伝統食材を大切にする同社では、日本の風土に最適なムクナ豆の“日本在来種”を復活させるべく奔走。種を全国に広め、現在国産ムクナ豆の約9割がこの種から成り立っています。
紀州ほそ川では、自分達が作ったムクナ豆の品質に製品化後まで責任を持つために、大阪河﨑リハビリテーション大学と共同研究をスタート。L-ドーパ測定機を導入し、加工前の豆だけでなく、製品化後の測定を行っています。
計測の結果、加工の仕方によってL-ドーパは著しく減ってしまうということが分かりました。手間暇かけて育てた、ムクナ豆の肝心の「L-ドーパ」が失われることのないように、開発チームと研究チームがタッグを組み、綿密な製品開発を行っています。
神経伝達物質ドーパミンが減少することにより、脳から出る運動の指令が身体にうまく伝わらずに様々な障害が出るパーキンソン病。手足のふるえやこわばり、転びやすいなどの運動障害の他、自律神経の症状やめまい、うつ、不眠、疲れやすい、認知機能の低下など症状は多岐に渡ります。
治療の際に一般的に使用されるL-ドーパ(エルドパ、レポドパ)製剤は罹患初期の症状改善によく効きますが、病状の進行とともに、薬の効かない時間が現れたり(ウェアリングオフ)、自身の意志とは関係なく身体が動いてしまう不随意運動(ジスキネジア)が出るなど、運動機能の合併症が出る場合があります。
ムクナ豆は、ドーパミンの元となるL-ドーパを多く含むことから、適量を食べることで不足したドーパミンを補うことで、パーキンソン症状を改善する効果が期待できます※1。中にはムクナ豆を食べて30分ほどで、歩行障害のあった人が歩けるなど、個人差はありますが著しい効果が認められる場合もあり、国内外で多くの研究が行われています。
ムクナ豆に含まれる天然L-ドーパは体内で緩やかに作用しウェアリングオフが起こりにくいのも嬉しい点です。医師と相談の上、薬との併用や、薬の効きにくい時間の補完に使うという方がおられます。
ムクナ豆には天然のL-ドーパの他に、9種の必須アミノ酸が含まれています。
その中の一つトリプトファンは、ストレスを緩和してセロトニンを作り出す唯一のアミノ酸。ムクナ豆を適量摂ることでトリプトファンの作用により、心身をリラックスさせ不眠を解消する効果が期待できます。
実際に不眠に悩む方からは「不眠サプリを卒業できた」「ムクナ豆を食べてからぐっすり眠ることができる」「数年ぶりに朝までぐっすり眠れた」という声が見受けられます。
さらに、不眠の原因の一つと言われる「むずむず脚症候群」は就寝時に手足にむずむずとした不快感が起こり眠りを妨げますが、ムクナ豆に含まれるL-ドーパはこの症状緩和にも効果が期待でき、安眠を助けます。
一方ドーパミンはわくわくした気持ちや集中力、記憶力にも関係し、意欲を生み出します※2。うつ症状がある人の体内ではドーパミン不足が生じている場合があり、その場合ドーパミンを増やすことで気持ちが明るくなったり、精神が安定するなど、うつ症状の改善が期待できます。実際に医療現場においても、ドーパミンに着目した抑うつ薬にも注目が集まっています。
うつ状態まで行かなくても、「やる気が出ない」「めんどくさい」というのは日常でよくあるお悩みですよね。「ムクナ豆を摂ると気持ちが晴れる」「億劫だと思うことが減った」という方が多くいらっしゃいます。仕事や日常生活で、集中力を高めたい!元気を出したい!というときにムクナ豆は力を発揮してくれます。
なお、ドーパミンを生むためにはタンパク質を摂ることが有効です。タンパク質とL-ドーパの両方を含むムクナ豆でドーパミンを補うことではつらつとした気分を取り戻しましょう。
良質なタンパク質とL-ドーパをプロテイン代わりに摂るという利用法もあります。ムクナ豆は、体内で作れない必須アミノ酸9種類をバランスよく含む上、L-ドーパの効能で、モチベーションを高めてくれる、手足の動きがスムーズになるなど、通常のプロテインにはない嬉しい効果が期待できます。
タンパク質が不足しがちな高齢の方だけでなく、運動をされる方にもおすすめです。運動前やお出かけ前に、ムクナ豆を食べられてみてはいかがでしょうか。
ムクナ豆畑から
当WEBサイトの編集担当、阿部と申します。自社農園の農園部の応援で、一年を通してムクナ豆の栽培を行いました。初夏、ムクナ豆の芽が出て植え付けを行い、可愛いツルが伸び、喜んでいたのも束の間、盛夏を迎える頃には、その生命力に驚きます。新緑がまぶしかった葉の色がひときわ濃くなり、そこからのムクナ豆の成長を一言で表すならそれは「侵略」。にょきにょきと四方八方にツルを伸ばし、どこかに掴まってやろうと果敢に獲物を狙うその姿は人間のようにも見え…。あっという間に近くの植物を飲み込み、横の林にも果敢に絡みついていきます。畑は一瞬でムクナ豆の海に覆われました。 まるで生きているような緑の塊を目にして、思います。一粒の種豆からあふれ出すこの生命力、爆発力はいったい何だろうと。
最近は「今日は寝不足で頭が回らいな」「やる気が出ないな」というときにムクナ豆粉末をお湯に溶かしていただきます。少しするとおでこのあたりがぽかぽか温かくなったように感じて、目もシャキッとして元気が出てきます。齢40代、ムクナ豆が体調の曲がり角を乗り越えるのに心強い相棒となっています。これから年齢を重ねるのも楽しみだなと思います。ムクナ豆がこれほど注目され、人々に求められている理由は、やはりL-ドーパという成分でしょう。ムクナ豆だけが、現在知られている植物の中で異様に多くのL-ドーパを含んでいます。2番目に多く含まれるとされるソラマメの約20倍ものL-ドーパ含有量を誇り、食物の中で圧倒的な存在です。年齢を経て心身が変化し身体が思うようにいかないとき、活力が不足しているとき、人は何とかその状態を脱したいと願います。薬に頼ったりコーヒーを飲んだりするように、何ならその前段階で、極めて自然に近い形の「ムクナ豆」はとっても合理的に心身を整える手段なんじゃないかと思っています。
そもそも自然界はありとあらゆる恵みを私たちに無償で与えてくれています。梅を食べるとお腹の調子が良くなるとか、やけどをしたらアロエを塗っておくとか、虫よけには薄荷が良いとか、その成分の正体が分からない古い時代から、私たちは自然が用意してくれたプレゼントを、先人の知恵として親から子へ、孫へと伝えてきました。インドの古代医学書アーユルヴェーダに記されていたり、日本では遅くとも江戸時代には食べられ当時の薬物書「本朝食鑑」にも載っている八升豆(ムクナ豆)ですから、昔の人々も肌身でこの豆の力を感じ、「なんか分からないけど調子いいぞ」と思って取り入れていたのかも…と想像がふくらみます。
私は10年以上自宅でも野菜を栽培しているのですが、今まで育てた数多の野菜たちの中で、ムクナ豆の植物としての強靭さは群を抜いていると感じます。野菜に含まれる栄養素の低下が叫ばれる近年(2010年代の野菜は1960年代の野菜に比べ栄養価が約半分!)※、適切な生育管理は不可欠ですが、連作障害もなく無肥料で毎年たくましく育ち、BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)等9種の必須アミノ酸を豊富に含む栄養価、さらに他にはないL-ドーパを有するムクナ豆は、貴重なたんぱく源として、高機能栄養食品として、また手軽にドーパミンが補える食材として大変貴重な存在です。これらの優秀な栄養の秘密は、やはり弱肉強食の畑で日光権を制する類まれな生命力にあると思えてなりません。
今後もムクナ豆の可能性を探り続けて情報発信してまいります!
※参考 日本食品標準成分表の1950年初版と2010年五訂増補版との比較より