研究資料とビーカー

論文

インドではバイアグラのような利用法も?精子を酸化スト レスから守るムクナ豆

ムクナ豆による男性不妊の改善に期待

ムクナ豆にはもともと日常動作の活発化を促進する効果がありますが、男性の活力増進によい成分としてもよく知られています。特に海外において、精子の質改善や不妊領域での効果に対する研究が多く行われています。
中でも特に注目したいのが「精子を酸化ストレスから守る」という効能です。呼吸をしている生物は、酸素を得る代わりに常に「酸化ストレス」という病態に脅かされています。酸化ストレスとは活性酸素が増えすぎて体内でそれを打ち消そうとする力が押されて均衡が崩れている状態で、様々な生活習慣病の原因となります。その影響は生殖器においても例外ではなく、酸化ストレス下では乏精子症や精子無力症の原因となり、男性不妊につながります。WHOの発表では、男性側に原因があるケースが実に48%を占めるというデータがあり(2010年WHO世界保健機構)、昨今社会問題となっている不妊に悩むカップルの増加を考える上で、男性不妊症状の改善は欠かせません。
そんな中、ムクナ豆の天然成分が、精子を酸化ストレスから守るという研究結果が示され、大きな希望となっています。以下に海外の研究結果をご紹介いたします。

酸化ストレスが及ぼす高齢ラットの精子への損傷に対するムクナ豆(Mucuna pruriens)の効果

要約
マメ科の植物であるムクナ豆(Mucuna pruriens Linn.)は、催淫作用や精子形成作用があることで知られている。
本報では、活性酸素種(ROS)により引き起こされる精巣上体精子の構造・機能の病態生理学的な変性に対してムクナ豆がどのように保護効果を示すかについてウィスターラット(Wister albino rat)を用いて検討した。
ラットは次に示す4つのグループ(グループI~IV)に分類した。即ち、若齢(対照)、高齢、ムクナ豆(M. pruriens)のエタノール抽出物(200 mg/kg 体重当たり)で処理した高齢ラット及びムクナ豆で処理した若齢ラットの4グループである。
実験期間終了時(60日後)、ラットを解剖し、精巣上体精子を採取して、その数、生存率、運動性、形態を調べ、形態計測解析を行なった。
酵素由来および非酵素由来の抗酸化物質、活性酸素、脂質過酸化物(LPO)、DNA損傷、染色体完全性、ミトコンドリア膜電位について測定を実施した。
高齢ラット群から得られた結果は、精子数、生存率、運動性の大幅な減少、形態的損傷の増加、細胞質残存精子数の増加を示した一方で、ムクナ豆投与群ではこれらの変化は有意に回復した。
高齢ラット群では、脂質過酸化物(LPO)、ヒドロキシラジカル(HO˙)、過酸化水素(H2O2)の生成が大きく増加し、酵素由来および非酵素由来抗酸化物質の顕著な減少が観察された。
ムクナ豆の投与は、活性酸素種と脂質過酸化物の産生を有意に減少させ、酵素由来および非酵素由来の抗酸化物質を有意に増加させた。
高齢ラットから回収した精子では、有意なDNA損傷、染色体完全性の喪失、ミトコンドリア膜透過性の増加が見られた。これらはグループIII(ムクナ豆投与した高齢ラット群)では大きく減少した。
今回の結果から、ムクナ豆の抗酸化物質向上作用、フリーラジカル消光作用、精子形成作用が示唆された。まとめると、活性酸素の低減、抗酸化防御システム及びミトコンドリア機能の改善により、老化における精子の損傷が有意に減少した。

引用)高齢ラットの精子の損傷に対するムクナ豆の作用に関する論文 Sekar Suresh,Elumalai Prithiviraj,Seppan Prakash,“Effect of Mucuna pruriens on oxidative stress mediated damage in aged rat sperm”Int J Androl.2010Feb;33(1):22-32.doi: 10.1111/j.1365-2605.2008.00949.x. Epub 2009 Jan 8.PMID:19207619DOI: 10.1111/j.1365-2605.2008.00949.x